獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「手前味噌に自国の劇団を誉めそやすのは憚られるが、俺もこんな演劇を見たのは初めてだ。正直、驚いている」
「はっ! 自国も他国もない、良いものは良いと声高に叫べばいい」
「そうだな」
 立場上、俺たちはかなり目が肥えている。その俺たちをもってしてもヴィヴィアンの演技は相当に素晴らしいもので、その才覚を疑う余地など無かった。
 一時間やそこらの準備で見る者の目を奪う演技をしてみせたことはもちろん、女の性を秘して俺の近習を完璧に勤めていることにしてもそうだ。多少のドジを差し引いても、ヴィヴィアンはそこいらの侍従など比較にならないほど優秀だった。
 しかし、これを容易になしてしまうヴィヴィアンとはいったい何者なのか……。
 彼女の才能に感嘆しつつ、胸には疑問も湧きあがった。
 やがて場内にブザーが鳴り、第二幕の幕開けを告げる。
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