獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 すると、少し遠い目をしたマクシミリアン様が隣にやって来て口を開く。
「すべてマリエーヌがしたことだ。彼女曰く『視覚が人に与える影響というのは甚大でございます。逆を申せば、此度の皇都への帰還隊列は、陛下のご威光を存分に人々の目に焼き付ける絶好のチャンスなのです』だそうだ」
 ……なんとも姉様らしい台詞だ。
 同時に姉様の理論には物凄く賛同できた。かつて芸の世界に身を置いてきたからこそ、視覚がもたらす効果の大きさは私自身痛感していた。
「たしかに排斥が声高に叫ばれる皇都に帰るのですから、現皇帝としての威厳を見せ付ける為に見た目の演出は重要ですね」
「ああ。そうしてマリエーヌは『私に全てお任せください』との宣言通り、この短時間で俺用の衣服や一等品種の白馬、果ては隊員用の揃いのお仕着せからのぼり旗まで漏れなく揃えてしまった。本来、カロス率いる隠密部隊は表舞台には登場しないのだがな」
 マクシミリアン様は、実用的なそれから華やかな軍服とマントへと装いを改めた隠密部隊の面々を振り返り、恐れ入ったとばかりに肩をそびやかした。
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