獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 伸びてきた手に頬のあたりをサラリと掠められ、ビクリと肩が跳ねる。マクシミリアン様は息を詰めて固まる私に見せ付けるように首筋のあたりにスッと顔を寄せた。
 直後、以前にも感じたチリッとした痛みが走り驚きに息をのむ。これ……!
 ゆっくりと顔を上げたマクシミリアン様は艶然とした笑みを浮かべ、朱色の舌でチロリと唇を舐めた。その様子が匂い立つように色っぽく倒錯的で、頭がくらくらした。
「頬が瑞々しいリンゴのようだ」
 マクシミリアン様はフッと笑み、私にトンッと体重をかけた。
「きゃぁっ!?」
 気づいた時、私は寝台に仰向けになっていた。
 さらにギシリと寝台が軋んだと思ったら、マクシミリアン様が覆いかぶさるような格好になって上から私を見下ろしていた。
 ……な、なに?
 喉がカラカラに乾き、心臓が断末魔の悲鳴のようなけたたましさで鳴っていた。
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