獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 腰に置かれたままの手が気になって、さりげなく距離を取ろうとする。しかし、マクシミリアン様は逆に手に力を込め、離れることを許してくれない。
 ……あ、あれ?
「政府としての方向性は既に決定しているからな、今さら俺が細かな指示を出すまでもない。ざっと意見のすり合わせをして終わった」
「そうでしたか。あの、申し訳ないのですが、これから上掛けのシーツも付け替えますので離していただいても……?」
「嫌だ。俺がこうしていたい」
 遠慮がちに切り出したら、マクシミリアン様に予想だにしない返答をされて驚きに言葉を失くす。さらにマクシミリアン様は明確な意図を持って、腰に添えた手でグッと私を抱き寄せる。
「あっ!?」
 体の内に不可解な熱が灯り、全身の体温がみるみる上がっていくのを感じた。
 ……いったい、マクシミリアン様はどうしてしまったの?
 彼が醸し出す濃密な色香が、私をひどく困惑させる。怖いくらい真剣な目をしたマクシミリアン様が、腰を抱くのと反対の腕を持ち上げた。
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