ささやきはピーカンにこだまして
「はい、みなさんご静粛に。今年度の女子バドミントン部の、新入生勧誘係は、われらがメーメに決定いたしましたぁ。心からのエールを、お願いしまーす」
「ひゅーひゅー」「がんばー」
 いや、きみたち。
 それのどこがエールだ。
「では、残りの4人は必然的にポスター係になりますので。ささ、まいりましょう。掲示板がわれらを待っているぅ」
「…ちょ」
 逃げ足、早っ。
 んもう!


 講堂の尖塔の時計は午後3時。
 まだ毛虫の心配をしなくていい桜の樹の下で、わたしたち運動部の代表がお待ち申しあげているのは、同じ敷地内の、ほんの数メートル先からやってきた、ニューフェイス。
 新しいことといえば、使う校門が変わっただけの、ヒネた新入生。

 今日は4月恒例、奴隷市場の開催日だ。
 生徒玄関から校門まで机をならべて、声をからして勧誘合戦。
 オリエンテーリングが終わって、平常授業が始まった日だけの特別行事なので、これから1年間、最下級生としてこき使われる1年生にとっては、たった1日だけのレッドカーペット。

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