ずっと気づかなかっただけ。

小走りでクマさんの横を通り過ぎようとすると、

「そっち、千景いるけど。」

え。

掴まれた腕。

は、話しかけてくれた。

というか、この短期間で色々察してくれたのだろうか!

優しい!

怖いとか思って今までごめんなさい!

「…ありがとうございます」

驚きながらお礼を言って、

違う方向に向かって歩くとついてくるクマさん。

あれ、こっちに用事?

「クマさんもこっちに用事です…ふべっ、すみません!」

後ろを振り返って話しかけた瞬間曲がり角から出てきた誰かとぶつかってしまう。

ひぃ!変な声出た!

恥ずかしくなりながら、

ぶつかった人に慌てて頭を下げて謝る。

「真白こんなとこで何してんの。あれ、クマも一緒なわけ?」

…。

私はロボットのようにぎこちなく顔を上げる。

顔を上げた先には、

今日も朝から部屋に侵入させてもらった私の推しで。

今一番会いたくなかった人で。

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