ハロウィンの奇蹟
 仲睦まじく歩く2人の姿を見ていると黒い髪をなびかせて幸子さんが肩越しに振り返る。
 薄暗いけれども西日を逆光にした唇が「ありがとう」と呟いた気がした。


「こちらこそありがと」


 思わず私の唇からそんな言葉が漏れる。

 きっと幸子さんの耳には届かない距離だけども嬉しそうに微笑んでくれて――、その姿が霞み始めた。


 それは、何度か見た事のある『幽霊の終わりの始まり』。


 低い西日で長く伸びた建物の影に混じりながら、まるで滲んで溶けるように幸子さんの輪郭が無くなっていく。
 

 薄ぼんやりと消えていく幸子さんの体。
 殆ど透けているといってもいい幸子さんの手がお爺さんの痩せた頬を撫でた。

 それに気付いたお爺さんは…愛しそうに目を細めて幸子さんの手を、重ねる事は出来ない透明な手にそっと自分のしわがれた手を重ねる。


 透けた手がまるでお爺さんの手に流れ込み混じり合ったように見えた。
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