【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「聖良、こっちに来てくれ」
「はい」
お風呂から上がって髪の毛を乾かし終わって寝室へ行くと、棗さんがわたしをベッドに呼んだ。わたしが棗さんの隣に行くと、棗さんは優しく唇を重ねてきた。
「……棗、さん?」
「今日は色々あって、疲れた……。もう寝よう」
「……はい」
棗さんはわたしを抱きしめながら、その日の夜は一緒に眠りについた。
それからしばらくした時のことだった。気が付けばわたしたちは、結婚して間もなく一年が経とうとしていた。
手術をしていたお父様も容態も安定していて、一応は退院して今は自宅で療養しているようだった。今の所、他の部位に転移もなく安定はしているそう。まぁこれからどうなるか分からないから、油断は出来ないそうだけど……。
「お父様、今の所大丈夫そうですね?」
「そうだな」
手術後、わたしたちはお父様に度々会いに行くようになった。お父様とたくさんお話をして、もっと鷺ノ宮家について知りたいと思った。