【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「……棗さん。お父様が、棗さんのこと心配していましたよ」
「親父が?」
「はい。棗さんがこれから社長としてやっていけるのかどうか、心配みたいです」
「そうか……。まぁ、親父が安心出来るように、俺も頑張らないとな?」
「……はい」
わたしと棗さんは仕事を終えると、自宅へと戻った。家に帰る時、車の中で棗さんはわたしにこう言った。
「……聖良、もうすぐ結婚記念日だろ?何かほしいものはあるか?」
「えっ?ほ、ほしいもの……ですか?」
「ああ。2週間後、俺たちは結婚して一年になる。何かほしいものがあればと思ってな?」
棗さんは優しい声でそう言うと、わたしの手を握ってくれた。
「……そんなこと、考えたことなかったです」
気が付けばいつの間にか、もうそんなになるんだな……。わたしたちは結婚して、もう間もなく一年になるんだ。一年も棗さんと夫婦として、こうして一緒に過ごしたきたのかと思うと、なんだかあっという間だった。