偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
──祖父の話によれば。
祖父と出会う前、菓子作りが趣味だった祖母には洋菓子店を開くという夢があった。
しかし家柄に厳しい祖母の両親はそれを許さず、地元で有名な大工である祖父との見合いを勧め、祖父の家業を手伝うよう言いつけた。
見合い後、祖母はたびたび、祖父に菓子を作った。それは白く柔らかで、黄色い蜜が出る不思議な菓子。祖父はそれが大好物だった。
やがて結婚を目前にした頃、近所に当時珍しい洋菓子店ができると噂になり、祖母はオープン前のそこへ頻繁に出入りをし始めた。
洋菓子店を開くことが夢だったのだから、興味があるのかもしれない。出入りくらいは許してやろうと思った祖父だが、洋菓子店の店主である金森善次と祖母があらぬ関係だという噂が流れ始め、嫉妬に狂い、出入りを禁じた。