偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
死ぬ間際、恨みで気が狂っていた祖父は、皺が刻まれ怨念のこもった目を俺に向けた。
『金森は、ハナが考え出したはずのあの菓子を奪って店の商品にした。俺が騒ぎ立てても、ハナ自身が真実を話そうとしなかったから、どうにもならなかった。金森が噂を盾にし、結婚間際のハナを脅していたに違いないんだ』
年寄りのうわ言をどこまで信じるべきか。話し半分で聞いていた俺だが、祖父の言うその菓子には覚えがあった。
祖母に一度だけ作ってもらったことがある、これまで食べたことのないほど美味しかったあの白い菓子。
『はなごころがあれば、俺が職を失ったときにハナは店を開けた。あんなに苦労をかけずに済んだのに……。頼む、冬哉。金森に復讐してくれ。ハナの仇を討ってやってくれ』