偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
半信半疑のまま、建築士になってもその話が頭から消えなかった。
祖父の願いを聞き届けてやろうなんて情は俺にはないが、あの菓子と同じものが本当にこの世に存在しているのか、確かめておきたくなった。
それまで興味のなかった金森製菓の『はなごころ』をデパートの地下でわざわざ買い、自宅に持ち帰る。
桜色のパッケージの箱を開くと、ビニールに包まれた白くて丸いフォルムの菓子が、二十個並んでいる。
祖母のはもう少しやわらかな見た目をしていた気がするのだが。そんなことを考えながら、手に取り、口に入れた。
『……なんだこれ』
口の中に広がる優しい甘さ、脳まで侵食されやみつきになる不思議な味。
悲しくもないのに、食べた途端に涙が出た。
間違いない。あのときと同じ。
祖母の菓子だ。