偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
大企業へ成長した金森製菓の栄華と引き換えに、祖母は夢を失い、苦労を重ね死んでいった。
その事実にやりきれない思いや怨みが募っても、復讐をしてやろうという意志は俺にはなかった。
金森製菓本社オフィスの設計も、代替わりした婿養子である今の社長からの依頼であり、驚いたが本当に偶然だったのだ。
仕事に私怨を結びつけてはいけない。設計は淡々とこなさなければ。
そう思っていたはずの俺が復讐を決意したのは、忘れもしない、あの日。
金森善次と初めて対面したときだった。
『……有名な建築士と聞いていたが、ずいぶん若いじゃないか。しかも、名を八雲というらしいな』
金森製菓の社長室へ出向いてすぐ、ソファに座っていた金森は俺を見て眉をひそめた。明らかに不機嫌そうだ。祖母を覚えているのだろうか。
『はい。八雲冬哉と申します』
『好かんな、その名は。八雲という者に昔さんざんな目に逢わされたことがある』
──は?