偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
この男、本村宏樹とは、大学で出会った。
祖父の影響でもともと建築に明るかった俺は学内で上位の成績を修めており、上昇志向の強い本村は早い段階で俺に興味を持ったらしい。
奴は先のビジョンばかり話し、とくになんの展望もなかった俺に起業するなら一緒にやらせてくれと懇願してきた。
なにかにつけて悪くない話を持ってくる存在だったため、邪険にせずにいたら、ここまできた。
情よりも、損得感情で動く本村は一緒にいて楽だった。合理的な奴なのだ。
友情だの絆だのというものをまったく信じていない俺にとって、奴のそういうところはビジネスパートナーとしてやりやすかった。
「で、今日寄ったのは、冬哉が心配たったからさ」
心配? 本村らしくない言葉だと思い、立ったまま「なんのことだ」と尋ねる。