偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
『……私、正直凪紗さんのこと、ちょっとどうかと思ってたんですよねぇ。普通、いいよって言われても事務所まで会いに来ないですよ』
付き合いがうまくいっていないかの探りに続き、凪紗の悪口が始まった。
若月がなんの意図でこんなことを言うのか見当がついていた俺は、返事をせずに聞き流す。
すると、右の黒いモニターに反射する本村が、手を振って俺になにか伝えようとしている。
横目で確認すると、凪紗の寝室の扉が開いている。
本村は扉の隙間を指差しながら、「凪紗さん、起きた」と口パクをしていた。
俺がわずかな焦りを顔に出すと、モニターの若月は『八雲社長?』と首をかしげる。
『大丈夫ですか? 疲れた顔をしていますよ。お嬢様だと、自分の彼氏のことまで家族を巻き込むんですね。甘やかされて育ったんだなぁ。なんか、私とは全然違う……』
そうだよ。凪紗と若月は全然違う。
凪紗は俺を混乱させる唯一の存在で、ほかの誰とも違っている。