偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
『そうだ! 今度、相談とかのりますよ。私はお嬢様じゃないからアドバイスできるかわかりませんが、なんだか社長が心配なんです。だって社長には、もっと……』
それ以上聞きたくない。お前が凪紗のなにを知っているというんだ。
「若月」
『はい?』
「そろそろ通話を終えたいんだが。凪紗が起きたようだ」
『……え?』
親指で背後を指し、ほんの少し見えている寝室の扉を若月に示した。
中にいる凪紗は、ドアの隙間の近くで聞き耳を立てていたのだろう。
わずかに扉が動き、反応したのがわかった。
『え……え!? 今、凪紗さんとご一緒なんですか!?』
「当然だろう。休暇を恋人と過ごしたらおかしいか?」
『す、すみません……私、てっきり……』
「心配してくれてありがとう。こっちは凪紗と楽しんでいるから、若月に相談することはとくにないよ」
傷ついたのか顔を歪めた若月に、俺は声色だけは優しく「じゃあ、よろしくな」と言い捨て、通話を切った。