偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

モニターがデスクトップに戻った瞬間、背後で本村の挑発的な口笛の音がし、俺は苛立ちながらも振り向かずに仕事の画面を出した。

「冬哉、さっきの素?」

「うるさい」

なんと答えようとも都合よく話を運ばれるだけだと判断し、一蹴する。
それに、聞かれたところで自分でもよくわからない。この生活にあてられて俺もおかしくなっている。このままではいけないと思うものの、苛立ちと混乱はさらに募っていく。

続いてドアの向こうから凪紗の「グスッ」という声がし、さらに気持ちが重くなる。

「凪紗さん、すげー泣いてる。大丈夫?」

本村は半開きの扉を最後まで開き、凪紗の手首を掴んで「おいで」リビングへと引っ張る。それが黒いモニター越しに見え、俺はチェアーから立ち上がった。

「本村。いい。放っておけ」

「凪紗さん、どうして泣いてるの? ヤキモチ? かわいい」

本村は開いている手で、凪紗の前髪をなでる。

「本村。やめろ」

俺はその手を叩き、凪紗の手首も奪い返した。
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