偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
一瞬だけこの場は再会の感動に包まれたが、うしろから車を停めて戻ってきたアキトくんの咳払いがし、おじい様はピクリと動く。
「おじい様、凪紗は取り戻しました。ちょっと手こずって手記を盗られましたが、これでいいでしょう。商標権は渡せません」
喧嘩腰のその言葉に、おじい様の腕から力が抜けていく。
「おじい様……?」
「……『はなごころ』は、返す」
これには父も難しい顔をし、アキトくんはさらに「だからなんで!」と厳しい口調で追い立てる。
「八雲は凪紗を妊娠させた最低な男ですよ!? そんな非道な奴に『はなごころ』を渡さなきゃならない理由はなんですか! 教えてください!」
「もちろん、俺とて凪紗を傷つけられたのは許せない……だが、彼がハナの孫だったとは……彼をそこまで追い詰めてしまったのは、きっと俺だ」
おじい様には、どんな事情があったのだろう。すべてを知りたい。
弱々しくうなだれるおじい様に全員が困惑を見せたとき、ふと外でエンジンの音がした。
「……え?」
この音。開け放たれた玄関から聞こえてくる。庭へ目をやると、門から入ってガレージの横へ停められる車が見え、私は「どうして」と固まった。