偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

最初に反応したのは、アキトくんだった。

「八雲……!」

まるで私たち家族を守るように玄関の前に立ちはだかったアキトくんは、シンと音のしなくなった車を睨み付けている。

父と母も、「八雲くん?」「八雲さんよね?」とふたりで車の持ち主の名前を確認し始めた。

冬哉さんの車。予想通り、ドアが開き、長い足が片方地面に着くと、朝、別れたはずの冬哉さんが降りて姿を現した。

「……冬哉、さん……?」

どうして来たの。私が説得するって、手紙に書いたのに。
それでも二度と会えないと思っていた冬哉さんがこんなにすぐにやって来て、私は胸がいっぱいになるのがわかった。

「……凪紗」

彼は遠目に私を見て、切なげにつぶやいた。目を細めている。顔の傷のことかな、と思い恥ずかしくて頬をこすって隠したが、それでも私を見つめている。
どうしてそんな目をしているの。欲しいものを手に入れて、これからは縛られることなく、生きていけるのに。
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