偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「冬哉さん……?」
「すべて返すから……もう、なにもいらないから……凪紗にそばにいてほしい……」
うつむいて髪で隠れた目元は見えない。けれど、彼の涙の絡む声に、胸が苦しくなった。
なに? 私は夢を見ているのだろうか。
冬哉さんが、そばにいてほしいと言ってくれるなんて。
離れるべきだと思っていたのに。本当は私だってそばにいたい。こんなことを言われては、とても突き放す言葉なんて思い付かない。
「冬哉さんっ……」
「ごめん、凪紗……傷つけてごめん……」
たまらなくなって首を横に振り、しゃがんで「私は大丈夫です」と彼を抱き締めてあげたくなった。
しかし、一本踏み出した私を父がうしろ手で制した。
「八雲くん。これはとても謝罪だけで済む話ではない。まずは、なぜこんなことをしたのか話してもらわないと」
謝罪したんだからいいじゃない、と私は瞳を潤ませたが、父の厳しい言葉に身をすくめる。これ以上冬哉さんを追い詰めたくないのに。
するとおじい様が突然、「俺から話そう」と口を開いた。