偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

全員、体をおじい様の方へ向け、漂う緊張感に息を呑んだ。
白い髭が動き、ポツリと話しだす。

「俺と、きみのおばあさんであるハナは、結婚前、長いこと恋仲にあった」

話し出しですでに母が「え」と声を漏らし、冬哉さんもゆっくりと顔を上げ、目を見開いている。

「ふたりで菓子店を開くのが夢だった。ハナは俺よりもずっと、菓子作りの才能があった。……だが、ハナの家は厳しく、夢を追うばかりの俺と一緒になることに反対され、その地で名の知れていた大工の八雲と見合いをさせられたんだ。ハナは俺と一緒に店を開くことは諦め、八雲に嫁ぐことになった」

嘘……。待って、そうするとおじい様が冬哉さんを嫌っていた理由って、もしかして。

「八雲が憎かった。俺からハナを連れ去ったんだ。……きみに少し目が似ていた。しかも建築士だと聞いて。だから俺はきみに、あんな態度を取ってしまったんだ」

これまで理解できなかったおじい様の本心を知り、私の胸はズキンと痛んだ。
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