偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

「おじい様……じゃあどうして、『はなごころ』を奪ったんですか? あれは、ハナさんのお菓子だったんですよね?」

冬哉さんが気になっているであろうことを、私が先に尋ねる。

「そうだ、あれは、ハナの菓子だ。ハナの結婚が決まり、俺は急いで開業した。何度もハナに会い、八雲との結婚はやめてくれとせがんだ。……だが叶わなかった。ハナは、これで諦めてほしいと、自らあの菓子の作り方を俺に渡したんだ。手切れの品として、な」

「そんな……」

「ハナとの証を残しておきたくて、俺は菓子に『はなごころ』と名付けて商品にした。その後で死んだばあさんと出会い、一緒になったことで、この菓子の秘密を誰にも明かせなくなったんだ。……ばあさん怒るからな」

胸が張り裂けそうな悲しい恋の結末だが、最後には死んだおばあちゃんに対する愛情が言葉に滲んでいる。
ちらりと母を見ると、ホッとした顔をしていた。
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