偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「調査書を見て、ハナが苦労して死んだことを初めて知ったよ。娘さんを事故で亡くして、借金もあったとは。……そんなハナをそばで見ていたきみは、きっとつらかったろう。『はなごころ』を奪ったと思われてもしかたがない。あれは、俺の唯一の、ハナとの絆だった。でももう、それはきみに返したい」
「おじい様……」
──よかった。
おじい様は、ハナさんから無理やり『はなごころ』を奪ったわけじゃなかったんだ。
私は誰も悪者のいないこの話の結末を聞き、切なくも爽やかな気持ちになる。
おじい様は「ううう」とうめき声を出して泣き崩れ、母に背中をさすられている。
おじい様が誰かに謝っているところを初めて見た私たちは、驚いて顔を見合せた。
冬哉さんは、焦点の合わない瞳で、おじい様を見つめていた。
「……知りませんでした」
力なくつぶやき、そして横にいる私に視線を移す。
「でも、俺が欲しいのは……」
私にすがる瞳に、キュンと胸が疼く。うれしい。こんなうれしいことがあるだろうか。