偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「八雲くんの事情はわかったよ。でも、それとこれとは別だ。凪紗を妊娠させたことは一線を越えている」
再び父の言葉に引き戻された。私の気持ちを汲んでくれている母は「そんな……」と味方をするが、父の厳しい視線は揺るがない。
そこでやっと、私は妊娠していなかったことをまだ誰にも伝えていないと思い出した。
「お父さん! あのね、私……」
「凪紗は妊娠していません」
私を遮ってそう言ったのは、冬哉さんだった。
「……え」
どうして、バレてるの?
「どういうことだ、八雲くん」
父は眉根を寄せ、腕を組む。
「……俺は、凪紗を妊娠させるようなことはしていません」
混乱で頭が真っ白になった。あれ? だってあの日、たしかに彼に抱かれたはずだ。
キスをして、押し倒されて、服を脱がされて……いろいろした。
「凪紗は気づいていませんが、その日は……途中でやめました。妊娠するようなことまでは、していません」
続いて、全員の視線が私に注がれる。
「……凪紗。本当に、妊娠していないのか?」