偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
実の娘に言い返され、さすがのおじい様もグッと奥歯を噛み締めている。怒りの表情の中に絶望が浮かんでいた。
お母さんの言う通り。何度かお付き合いをしようと誘ってくれた男性が現れたけど、一族の掟を話すと「面倒だからいいや」と拒否されてきた。
そこを飲んでくれた冬哉さんを、おじい様が否定するなんてできないはずだ。
「美佐子! お前と達馬くんも、金森家の掟を守ってきたからこそ平和な今があるんだぞ。凪紗には過保護でちょうどいいくらいだ!」
ここで、父と母の視線が不自然に交わる。
「……ハァ、お父さん。守ってきたと思います? 私たちが」
父は腰を浮かせて「美佐子っ」と焦っている。
「な……なにぃ!?」
……そんな。まさか、お父さんとお母さんは、掟を守っていなかったっていうの?
バカ正直に従っていたのは私だけ?