偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「こら、凪紗! 言うことを聞くんだ!」
「イヤ! 金森家の掟なんてもう知りません。門限も守らないし、外泊だって解禁します。おじい様が認めなくても、私は冬哉さんのところに行きますから! ね、冬哉さん、いいでしょう?」
これにおじい様は「凪紗!」と悲鳴を上げ、父と母は少し違って「八雲さんにご迷惑をかけるんじゃない」と慌て出す。
うるさい声が目の前で飛び交っているが、私はそれが自分の外側にばかり叩きつけられているように感じ、なにも、内側へ染み込んではこなかった。
皆、いつまでも私を子ども扱いして、どういうつもりなのだろう。私だって冬哉さんとちゃんとお付き合いしてるひとりの大人なのに。
悔しくて涙目になりながら冬哉さんを見上げる。下からでは表情が見えなくて、心細くなった。
彼を複雑な立場にさせているのはわかっている。私の家のいざこざに巻き込んで、迷惑ばかりかけている。
こんなんじゃ愛想を尽かされたっておかしくない、と胸が痛くなったとき、頭上から、
「凪紗は俺が好き?」
と、私にしか聞こえないほど小さな冬哉さんの声が降ってきた。