偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
言葉とともにその吐息がフッと前髪にかかり、魔法にかけられたかのように動けなくなる。私は決まりきっている答えを、首だけ上下させてうなずいてみせた。
それを確認した冬哉さんは、焦りひとつ見せない表情でおじい様と父を見据える。
「お話はわかりました。僕と凪紗さんのお付き合いは金森家には認めていただけない、そういうことですね」
父は「いや、我々は……」と口を挟もうとするが、おじい様は「わかっとるじゃないか」と先に答えてしまった。
私は不安になり、冬哉さんと彼らに交互に視線を向ける。
「そうですか。金森製菓はたしかに僕のような男には釣り合わない、素晴らしい大企業です。創業者の善次様に反対されている今の状態では、僕と凪紗さんがお付き合いを続けていくのは難しいかもしれませんね」
え……? どうしてそんなことを言うの。
「と、冬哉さん……?」
泣きそうな私とは対称的に、おじい様は愉快そうな笑みを浮かべ始め、髭をくるんと触る。