偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

「本当に隅に置けないよなぁ、冬哉も。仕事中は淡々としてるのに、こんなにウブでかわいい恋人がいるんだから。色白に黒髪ストレートにワンピース、マジのお嬢様」

本村さんのいつもの言葉に、私は顔を熱くして「そ、そんな」とつぶやく。

「夜は忙しくて会えないから、なるべく昼に会ってるんだっけ? アポがなければ仕事場の出入りをしていいなんて、あの冬哉がそこまで甘やかすのは、凪紗さんだけだよ」

やっぱりここへ来るのは社員さんにとったら迷惑なのだろうか。心の中の不安を顔に出し、私は言葉に詰まった。

まだ自社では手伝い程度の私は、社会人としてとても未熟だ。専門スキルを磨いてここで働いている人々とは、経験値がまるで違う。

おいでと言ってくれる冬哉さんに甘えてここに顔を出しているけど、本当はどう見られているのか……。
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