偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
フロアに降りてきても、百八十センチを超える身長の彼の顔は高い位置にあり、私はそれを見上げる。
「来てくれたのか、凪紗。ありがとう」
甘い切れ長の目に、唇の薄い整った顔つき。綺麗に流れるグレーの髪はふわりと動き、スッキリとしたせっけんの香りがする。
「は、はい……」
私は風呂敷の結び目を握ったまま、胸がキュンキュンしだし、顔が熱くなっていく。
この人は私の恋人で、ここ建築士事務所『Y.SPACE』の社長、八雲冬哉さん。
若冠二十八歳で、大企業のオフィスにリゾートホテル、有名人や業界人の本邸・別荘の設計を手掛けてきた一級建築士だ。