偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
冬哉さんは座ったままの膝に肘を置き、顔の前で手を組む。
「今聞いていた通りだ。仕事は事務所に任せ、俺はリモートでできるよう調整してロングステイをしている。凪紗に人質となってもらうため、この一ヶ月準備していた」
「はい、それは大丈夫ですが、あの……『はなごころ』を奪ってどうするつもりなんですか? 私には話せないことですか?」
遮ってした私の質問に、冬哉さんはわかりやすく眉根を寄せた。その不機嫌な顔はこれまで見たことがないほど敵意に満ちている。
話してくれると思っていたのに、彼は凍てつくような視線を向けながら、
「お前には関係ないことだ」
とだけ返事をした。
心に矢が突き刺さったような気がし、胸を押さえた。痛みの正体を考えて気づく。
〝お前〟と呼ばれたのは、初めてだ。