偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

高校二年になり、進路を決める時期が来た。
祖父はタクシー運転手として就職できたことで心を少し持ち直しており、再び自分が成せなかった大工を俺に勧めた。しかし、俺は祖父のようになるつもりはなかった。

とくにやりたいこともなかった俺は、短気で怒鳴り散らしてばかりだった大工の祖父を、手の上で転がしていた建築士という仕事を思い出した。

あの立場の人は、祖父の言いなりになっているように見せかけて、いつもうまく使っていた。俺はあちら側になりたい。
人に利用されるのも、騙されるのも、お人好しで損をするのもごめんだ。

自分の身ひとつを使い、世間から金を取り返し、今まで損ばかりしてきた祖母に返す。そう心に決めた。

アルバイトで金を作り、建築科に合格した。
これからは俺が合理的に生きて、祖母が失ってきたものを代わりに手に入れていこう。

祖母が死んだのは、ちょうどその頃だった。

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