政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 秋瀬くんは私を弱くしてしまう。父の評価を渇望し、秋瀬くんへの醜い嫉妬を吐き出したあの日。私は彼に受け止められてしまった。

 たぶん、私がおかしくなったのはあのときが最初だ。にっくきライバルの秋瀬くんへの気持ちが変わって、今まで以上に素の自分をさらけ出すようになった。

 視線を落とし、シーツの上に伸びた秋瀬くんの手を見つめる。馴れ馴れしく触ってくる忌々しい手だったはずだ。でも今は、この手に撫でてもらいたい。

 寝ているならきっと気付かれないはずだと、大きな手に触れてみる。ぬくもりを感じただけで、泣きたいくらい胸が締め付けられた。

 手のひらを押し当てるだけでは足りない気がして指先を握ると、胸に感じる痛みと切なさが強くなる。

「私、秋瀬くんが好きなのかなあ」

< 105 / 342 >

この作品をシェア

pagetop