政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 ドアを入ってすぐの位置に立ち尽くしていた秋瀬くんも、私を見て目を丸くした。

「しろちゃん、なんで――」

「秋瀬くんはLa seule fleurのスパイじゃありません」

 今、秋瀬くんを見たら泣いてしまいそうだったから、敢えて視線を向けずに重役たちへ言い放つ。

 彼らは私がまだ小学生の頃から、父と一緒に見守ってきてくれたおじさんたちだった。すぐに納得してもらえるはずはないけれど、少しは聞く耳を持ってくれるに違いない。

 それなのに、特によくしてくれていた紘一おじさんが厳しい顔で首を横に振る。

「真白ちゃん。その男はスパイどころか、La seule fleurの社長子息なんだよ」

 ふ、とその場の音が耳に入らなくなる。

 秋瀬くんが、La seule fleurの社長子息?
< 159 / 342 >

この作品をシェア

pagetop