政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 黙っていられず口を開くと、向かいに座っていた秋瀬くんがちょっとだけ笑った。

 代わりに泰時さんが私を見て、なんとも嫌そうに眉を寄せる。

「秋瀬にスパイなんてできるわけがないだろう。ほかでもないイリスで」

 え、と声を上げたのはなぜか秋瀬くんだった。

「どういう意味だよ。イリスのスパイをしろって言ったのは父さんだよな。だから俺はふざけるなと思って、真面目に仕事してやったのに」

「ほかに理由が思いつかなかった」

「理由? なんの」

 秋瀬くんも顔をしかめる。そうすると父親の泰時さんによく似ていた。

 くすっと誰かが笑って、思わずそちらを見る。秋瀬くんの母親が、口元に手を当てて楽しそうに目を細めていた。驚いたことに、うちの両親も同じように笑っている。

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