政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 え、と声が出る。もう二十時になるのにいったいなにがあったというのか。

 ただならぬ事情がある気がして、慌ただしく席を立つ。父に場所を聞きながら、急いでその場へ向かった。



 そうして私は、都内のホテルにある最上階のレストランで顔をしかめていた。

「お見合いなんて聞いてない」

「言ってないからね」

 にこにこしながら言う父は、私を騙して呼び出した件について、まったく悪いと思っていないようだった。もっとも、騙されたというのも違うかもしれない。そもそもなにも言わなかったのだから。

 ホテルに呼び出されたあと、なぜか用意されていた淡いサーモンピンクのワンピースに着替えさせられ、ヘアメイクをされた。肩までのふわっとした髪は、仕事のあととは思えないほどきれいに編まれている。

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