政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 俺の妻なんだけどな。

 ほんのり苛立ちが込み上げて、話の途中だったのに席を立った。真白の側に移動し、肩を抱き寄せて大人げない真似を見せた。

「しろちゃん」

 嫌がる割に、甘えて頬をすり寄せてくる彼女の名前を呼ぶ。顔を覗き込むと距離がさらに縮まって、真白の匂いがふわりと鼻孔をくすぐった。

「甘えたい気分? 甘やかしてほしい気分? でも俺、このままだと襲っちゃうよ」

 すん、とまた真白が鼻を鳴らした。思った通り泣いていたらしく、目元を赤くしながら俺を見上げてくる。

「その方がお父さんは喜ぶかもしれない」

「……いやいや」

 先程も真白は父親について触れた。関係が悪いとは聞いていないし、実際にふたりを前にしてそうだとも感じなかったが、本人にとっては違うのかもしれない。

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