政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 嫌いと言われてもさほど心は痛まなかった。本当にそう思っているなら、今も俺の胸に顔を埋めたりはしないだろう。自分の気持ちを表す言葉が、ほかに見つかっていないのだと思う。

「優しくしてあげたくなるんだから、しょうがないだろ」

 自分より小さいのに、負けじと向かってくるライバル。「秋瀬が相手ならしょうがない」と諦めてきたこれまでの人間とは違う唯一の人。

 そんな彼女の弱さと不安を知った以上、もう突き放せない。

 真白は無言で俺の背中に腕を回した。

 柔らかい身体との距離が一気に近付いて、不覚にもどきりとしてしまう。

「しろちゃん」

 鼓動が速い。このままでは彼女に気付かれる。俺が意識し始めてしまっていることを。

「……しろちゃん?」

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