政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 本当は、ライバルなんて私が一方的に言っているだけで、秋瀬くんは歯牙にもかけていないだろうと思っていたのに。

 嫌だな、と強く感じた。

 秋瀬くんには、これまで通り私の先を行く腹立たしいにやけ顔の意地悪な男でいてもらいたい。優しくされると、からかわれてうれしくなってしまいそうだから。

 全身に感じる秋瀬くんのぬくもりと、鼻孔をくすぐる香りから逃れようと身体を動かす。でも、しっかりと抱き締められていて逃げられそうにない。

 私たちは夫婦になったけれど、その関係は同僚以上に進んでいない。キスは初日のあの瞬間だけで、あれもきっとからかいの一環だ。

 だけど、と頭の片隅で私自身が小さな声を上げる。

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