政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 秋瀬くんの方は見ずにキーボードのキーを叩く。力が入ったのは、あのあとも質問責めがひどかったからだ。思い出すだけで頭が痛くなる。

「そんなに怒るなよ」

「言わないでって言ったのに言うからだよ」

 口をきいてやるだけありがたいと思ってほしい。普段なら残業するのに、持ち帰りでやっている理由も秋瀬くんのせいなのだから。そうしなければ仕事に集中できないほど、みんなの興味を引いてしまった。

「本当に怒ってるんだからね」

 わからせるために、もう一度はっきりと伝える。

「ふーん。せっかく高いアイス買ってきたのにな。一緒に仕事しながら食べようと思ったけど、しろちゃんがそう言うなら俺ひとりでふたつとも食べ――」

「私も食べる!」

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