今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
「いえ、彼の弟です。まだ八歳なんですよ。実は、居候する代わりに普段は私が面倒見ています」
「ああ、驚いた。でも、随分と歳が離れているのね?」
「そうですね。若いときの子供と、年取ってからの子供みたいですよ」

 答えながら、陽茉莉も確かにそうだなと思った。二十七歳の相澤に対して、悠翔はまだ八歳。滅多に見かけないレベルの歳の差だ。
 陽茉莉も最初は、母親が違うのだと思っていた位だ。

「それなら仕方がないわね。残念」

 潤ちゃんは陽茉莉の空になったグラスを下げると、静かに別のグラスを差し出した。

「これ、何?」
「これはね、〝ミモザ〟っていうカクテルよ。オレンジジュースとシャンパンベース」
「ふーん」

 陽茉莉はグラスの長い脚を持ち上げて、逆三角錐になった部分に満たされた液体を見つめる。
 黄色くて、シュワシュワと気泡が上がっている。
 トッピングに缶詰のサクランボが乗っていた。
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