今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

 いつも温厚な高塔の口調に剣呑なものが混じる。
 普段の陽茉莉であれば「申し訳ございません」と謝罪してしまいそうなシーンだが、陽茉莉はぐっとお腹に力を入れてスマホを握りしめた。

『それに私、癒札を作れるようになったので、それを持っていけば少しは役に立つと思います。だって、礼也さんの作った癒札は礼也さんには効かないんですよね?』

 癒札はあやかしの妖力を回復させる効果があるが、作った本人である礼也には使えない。陽茉莉にそう教えたのは他でもない高塔だ。

 スマホ越しに、はあっと溜息を吐くのが聞こえた。

『わかった。下手に出歩かれる位なら、目の届くところにいてもらったほうがましだ。今いるのは港区高輪。品川駅と泉岳寺駅の間の山の手の辺りにお寺が広がっているんだけど、その一角にいる』

 陽茉莉は瞬時に頭の中で地図を広げる。高輪であれば、陽茉莉のいるこのマンションからさほど遠くない。

(お寺が多いとはいえ、結構な都心じゃない?)
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