今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

 だからあの日、悟ったのだ。
 相澤にとって、陽茉莉を守っているのはきっと恩返しの気持ちが強いのだろうと。


「引っ越す?」

 相澤の声が一段低いものに変わる。

「なんで?」
「悠翔君から聞いたんです。お父さんが帰ってくるって。それなら、私はお邪魔でしょうし。それに、最低限の祓除札は使えるようになったので──」
「だめだ」
「え?」

 陽茉莉は驚いて相澤を見返す。
 まさか、こんなに頭ごなしに否定されるなんて思っていなかった。むしろ、厄介ごとが減ったと喜ばれると思ったのに。

「親父は時々帰ってくる。だが、帰ってきても俺と悠翔の顔を見たら、その日のうちに次の場所に移動する。今回も同じだ」
「そうなんですか?」
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