今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
 牛乳と卵とお砂糖を混ぜ合わせ、食パンを浸す。フライパンにバターを入れると、溶け出した焦がしバターの芳ばしい香りが辺りに漂う。そこに卵液に浸した食パンを入れると、両面にこんがりと焼き色が付くように焼いてゆく。

 最後に上からグラニュー糖を散らして溶かし、甘く、そして表面をカリッとさせるのが陽茉莉の実家の新山家流だ。
 付け合わせにフレッシュサラダとヨーグルトを用意していると、ドアがカチャリと開いた。

「あ。おはようございます、係長」
「おはよう。すごくいい匂いが部屋まで漂ってきた」

 ラフなカットソーとチノパン姿の相澤は、キッチンを覗き込む。陽茉莉はその姿を見て、少しドキリとした。
 いつもきっちり髪の毛を整えてびしっとスーツを着込んでいるので、なんだが新鮮だ。多分これは、家着だろう。

(こうやって見ると、悠翔君に似てるなぁ)

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