運命の一夜を越えて
愛する人を失うつらさを、私も渉もすでに知っている。
お互いの父親や母親をがんで亡くしている私たちは、より、怖さを知っている。
その残酷さも。

「彩」
「・・・」
「頼む・・・頼むから・・・」

私は初めて渉の涙を見た。

目を真っ赤にしてそう告げた渉。
誰よりも自分の口にした言葉に傷ついているのは渉だ。

苦しんでいるのは渉だ。

私はエコー写真を抱きしめたまま、目を閉じた。
その瞬間、瞳から熱いものが伝う。

私たちは絶望の中悲しみの涙を静かに流し続けた。
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