運命の一夜を越えて
声にしなくてもわかる。
言葉などなくても彩が言いたいことはわかる。

でも、やっぱり彩の声が聴きたいと思ってしまうのは、俺の身勝手な思いなのだろうか。

「あり・・がと・・・」
彩は俺の想いをすぐに感じ取ってしまう。
わかってほしいことだけじゃなく、そうじゃないことも。

今だってこうして俺が彩の声が聴きたい。
聞いて安心したいと思っていることを感じ取って、きっとつらいはずなのに、絞り出して言葉にしてくれる。

「愛してる。」
俺は彩の額に口づける。

あったかい。
ぬくもりがある。

生きてる。
彩は生きてる。
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