運命の一夜を越えて
「お目覚めになりましたか」
そう言いながら渡部医師と高梨医師が病室に入ってきた。

「ありがとうございました。」
立ち上がり頭を下げると医師たちは複雑な表情をしながら小さく頭を下げて返してくる。
その姿を見るだけで決していい話ではないと俺たちは悟った。

不安そうな彩の手を握りながら、医師たちの話を待つ。

「今回の脇腹の痛みはおそらく腫瘍が原因でしょう。」
口を開いたのは渡部医師だった。
「わき腹にできた腫瘍の周りに、血腫ができています。エコーを見ながら少し血を抜いたことで痛みも今は和らいだかと思いますが、またすぐに血がたまれば神経に触れて痛みを感じることがあるかと思います。」
「赤ちゃん・・・は・・・」
声を絞りだすようにして医師に質問をする彩の表情はかなり切羽詰まったような不安に満ちた表情だった。

「赤ちゃんは痛みを感じてませんよ。それに処置も胎児に影響のある処置はしていません。」
高梨先生の言葉に彩は心からほっとしたようで、少し体から力が抜けるのを感じた。
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