運命の一夜を越えて
「今点滴している沈痛成分の入った薬は妊娠後期には胎児に影響はないと言われている成分ですので、ご安心ください。」
妊娠後期になったことでいろいろと治療の幅も広がるのかもしれないと渡部医師の話を聞いて思ったのもつかの間。俺たちには究極の選択肢をあげられることになった。

「彩さん」
高梨医師が彩に近づき話始める。

「今赤ちゃんは2200gくらいに成長しています。ここまで妊娠を継続できたことは彩さんの努力のたまものだって思っています。今出産したとしても元気に生まれて生存できる可能性はかなり高いです。保育器で少しの間過ごすようにはなるけれど、低体重児の生存率はかなり上がっているし、100%とは言えないけれど生存の可能性はかなり100%に近い。エコーを見る限りでは臓器も今のところ何も問題はありません。」
高梨医師から渡部医師が言葉を引き継ぐ。

「彩さんのがんの状況は深刻な状況です。今のまま出産まで治療をしないことは難しい。」
「・・・」
「ここで我々から提案があります。その中から、ご家族でどのようにするか決めてほしい。選択するまでに時間はあまりありません。」
彩は再び繋いでいる手に力を込めた。
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