運命の一夜を越えて
でもあの時と今とは違う。
彩を見ると伝えられた選択肢からどれを選択したらいいかわからないようだった。

「少し考える時間をください」
医師に何か返事を伝えなくてはと思いながらなんとか言葉にすると、彩が俺の手を少し自分の方にひいた。

「?」
彩の方に視線を戻すと彩は俺の方を困ったように微笑みながら見ていた。

「渉・・・」
「ん?」
「私・・・入院・・・しようかな・・・」

その言葉に俺はなおさら限界を感じた。

自分の病気をよく知っている彩。
一番自分の限界を知っているのは彩だ。

でも呼吸困難になった後も彩は家に帰ることを選択した。
なのに、今彩は入院する選択をしようとしている。
< 419 / 498 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop