最後の悪夢
「それ、おろしてよ! みさきちゃん」
「嫌です」
河井先輩が顔を青ざめていた。それもそうだ。
幻覚の中でも自殺はタブー。私がここで投げればもう命はかえらない。
「みんなおかしい、どうかしちゃったんです。合宿、怖かったです。辛いことばかりだった......! 頭がおかしくなるのも分かります、でも、こういうことは酷いでしょう? みんながみんな他の人の気持ちが分からなくなってるんですよ!」
嗚咽混じりに言う。
みんな私のことを見ている。隣に並んでいる同い年の人も、ステージの上に立つ人たちも――――凛上も、困ったような悲しそうな顔をして私を見下ろしていた。ステージの上での劇はおしまいだ。あなた一人に戦わせるもんか。全部背負わせてたまるか。
「自分もそう思います。あの、一旦落ち着きませんか」
右側にいた男の子が、不安そうに手を上げた。
「......私も、話し合った方がいいかと」
一番右端の女の子もそう言った。みんなついていけなくて置いていかれて、なんとかしようと考えていたんだ。私と同じことを考えていたんだ。
私が待ち望んだ静寂がすぐそこにあった。
誰も何も言えなくなったのを見計らい、私はゆっくりと、自分の意見を述べる。