素直にさせないで
「あのエースも愛知選抜なのに、不破にはまるで歯がたたないなぁ・・・。」
ちょっと気の毒そうに山崎先生は苦笑いを浮かべた。
「でも、アイツがあんな風にゴール下で暴れられるのは、彼のパスのおかげじゃないんですか…?」
私はあることに気づいた。
「おお、さすが新川だな。バスケ初心者なのに目のつけどころが違うな。やっぱりマネージャーに向いてるんじゃないか?」
「やめてください。」
のんきな先生を睨み付けながら、確かめるように視線をコートに戻した。
「あのイケメン君のパスが、いつも不破がシュートを取るためのパスを出してる…」
「ああ、ガードの湊な。」
「あ、はい。」
「実は去年のミニバスの東海大会優勝の時、不破が得点王でアイツはアシスト王に選ばれた。」
「へぇ…」
「湊は相当うまいぞ。神の子って俺は勝手に呼んでるんだ。」
「神の子ですか?」
「ああ。なーんでも器用にできるんだ。センスあるんだよな。パスもシュートも。どこのポジションやらせても、何を教えてもそつなくこなせる。特に不破を引き立たせるのは、湊しかいないな。」
「不破さん!」
「おうっ!よこせ!!」
阿吽の呼吸。
まるで二人にしか分からない目配せで湊のドライブに合わせて、バカがパスを受けてシュートを決める。
ピーっ!!
「バスケットカウントだぁぁっ!!」
審判の笛にベンチのみんなが立ち上がり拍手をする。
バカは湊にニッ…と親指を立てながら最高にほくそ笑む。
湊はそれににこにこしながら答える。